プロセスケミスト初学者が学んだこと

若手プロセスケミストのBocです。

今日は会社に入ってプロセスケミストになってから学んだことについてです。

雑学程度に「ふーん」って読んでもらえれば幸いです。

 

 

プロセスではカラムは避ける

毎日のようにやってきた精製法の王道、カラムクロマトグラフィーですが、プロセスではまずカラムしないです。

どうしてもやむを得ないときには本当に渋々やりますが、バリデーション(再現性)を取るのが難しいので避けたいです。

その代わりとして、目的物が固体なら晶析、液体なら蒸留を行います。

蒸留となると加熱が避けられないので化合物の安定性に懸念が残ります。

また蒸留用の設備が別途必要になるため、可能であればテレスコーピング(ワンポットで複数の反応を実施し、固体となる化合物まで導く)の実施や、合成ルートや保護基の変更などを検討します。

もちろん、プロセス初期や不純物合成時などは使用しますけどね。

 

アレニウスの式は結構大事

反応速度は10℃上昇でざっくり2倍です。この感覚は覚えておきましょう。

テーマが開発後期に差し掛かり、プロセスロックされた後、それぞれの製造工程の規格妥当性を確認していくことになります。反応温度幅などは分かりやすい一例ですが、製造時の温度幅のコントロールが10℃~20℃程度取っておくことが多いです。この幅を越えると逸脱処理が必要となります。医薬品の品質が問題ないか証明する必要が出てくる、場合によっては製造のやり直しになりかねません。

しかし10℃では反応速度は2倍です。これがどのくらい副生成物の発生に寄与するのか、よく吟味する必要があるのです。

方法としては実験計画法、パラメータスタディなどがあります。興味があれば学んでみてください。

 

 

再現性は取れるように

突然ですが、実験ノート、ちゃんと書いてますか?当たり前じゃないか……と思われる方、さすがです。

実際にプロセスケミストとして仕事をする際にはここまで求められます。

☑実験:記載するのは当然ではあるのですが、実験ノート共有することもあるので

☑日時:これも当然ですね。一挙動ごとに書きます。

☑使用装置、使用機器:機器ごとに番号が紐づけられていることもあるので、それも書きます。

☑使用試薬:メーカー、グレード、Lot.No、使用量(分液時含む)も忘れずに

☑攪拌速度、温度(内温、外温):ちゃんと測りましょう。温度計は使用前に校正も忘れずに。

☑反応内部の様子:色、攪拌の様子、結晶のサイズなど

☑濾過性:かかった時間とかですね。スケールアップすると5分で終わっていた濾過が一日かかることもあります。

☑使用したカラム・カラム条件:Rf値はもちろん。使用したカラムのロット、種類(NH?OH?SH?)、溶媒比率から、一つのフラクション量まで漏らさず書きましょう。

 

会社やテーマ開発段階によるのですが、ざっとこんな感じでしょうか。

本来はこれよりさらに詳しく書いています。嘘じゃないです。覚悟さえしておけば慣れます。

詳しくは社内ルール(SOP)に遵守してください

 

略語が多い

これは本当に悩ましい問題です。特に3文字表記が多数あります。

GMPだっけ?GNPだっけ?DMFって溶媒じゃないの?FDAとNDAってなんだっけ?などなど……

別の記事で最低限知っておきたい略語集をまとめますね。

 

OPRDを読もう

学生の頃は毎日のようにJACS、Angew、OLなどなどを読まれていたことと思います。

意外と知られていないのですが、プロセスに特化したジャーナルが存在するのです。

その名もOPRD。実際の製薬会社の社員の論文が他のジャーナルと比べて圧倒的に多く、非常に勉強になります。以下にリンクを貼っておきます。

Organic Process Research & Development (acs.org)

 

もっとある気もするのですが、今回はこのあたりで。

気になることがあればコメント欄にお願いします。

 

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