若手プロセスケミストのBocです。
先日実験していた時のエピソードから溶媒の融点のお話です。
とある実験でジオキサンで還流条件の反応をかける予定でした。ところが、塩基としてn-BuLiを滴下するとのこと。なんとなく発熱が怖いなーと思い、最初は氷浴につけていたんですよ。見事にフラスコの中が凍ってしまいました。THFと同じ感覚でいたのでびっくりしました。
ほとんど構造同じなのにな~と思うのですが……炭化水素は奇数偶数で融点がギザギザになったな~なんてことを思い出しました。全然関係ないんですけどね。
そんなわけで今回は極低温(-78℃)でも使用可能な溶媒と、0℃でも凍ってしまう融点が0~室温の(意外な?)溶媒についてまとめました。
見直してみると面白いものですね。
-78℃で使用できる溶媒 vs 0℃で凍る溶媒
トルエン:-93℃ vs ベンゼン:5.5℃
ベンゼンの方がメチル基がない分パッキングしやすいためなのでしょうが、メチル基一つでこんなに変わるとは驚きです。
ヘキサン:-95℃ vs シクロヘキサン:6.6℃
環状になると融点が高くなります。テストに出た気がします。
2-BuOH:‐115℃ vs t-BuOH:25.5℃
t-BuOHは室温では固体であるのは有名ですね。
使う前には温浴であっためてあげたりします。
ただ2-BuOHがこんなにも低温OKとは意外です。
THF:‐108.4℃ vs ジオキサン:11.8℃
今回の収穫です。これは常識だったのでしょうか……無知でした。
-78℃で使用できる溶媒 vs ‐78℃で凍る溶媒
ジクロロメタン:‐96.7℃ vs クロロホルム:-63.7℃
ジクロロメタンはアセトンバスでも使用可ですが、クロロホルムは凍ります!
同じ感覚で使いがちなのですが、要注意ですね。
その他の溶媒についても調べてみました。
-78℃で使用できる溶媒
カルボニル系
アセトアルデヒド:-123℃
アセトン:-94℃
酢酸エチル:‐83.6℃
炭化水素系
ヘキサン:-95℃
へプタン:‐90.6℃
トルエン:-93℃
溶解性もそれほど高くないので、こんなに低温で使うことがあるのかは別の問題です。
エーテル系
2-MeTHF:‐136℃
THF:‐108.4℃
ジエチルエーテル:-116℃
CPME:‐140℃
MTBE:‐109℃
基本的にエーテルはみんな似たり寄ったりです。ジオキサンは例外でした。
アルコール系
2-BuOH:‐115℃
i-PrOH:-88.5℃
n-PrOH:-126℃
MeOH:‐96℃
EtOH:‐117℃
アルコール類はだいたい低温オッケーですね。冷媒として使われるぐらいなので当然といえばそうかもです。
エチレングリコールは融点が高め?です(エチレングリコール:‐13℃)。
ちなみにメタノール・水の混合溶媒比を変えることで様々な温度に対応した冷媒に使えるらしいです。
いざ、低温反応!さて、バスはどうする?〜水/メタノール混合系で、どんな温度も自由自在〜 | Chem-Station (ケムステ)
その他
ジクロロメタン:‐96.7℃
0℃で凍る溶媒
酢酸:16.6℃
シクロヘキサン:6.6℃
HMPA:7.2℃
ジオキサン:11.8℃
t-BuOH:25.5℃
DMSO:18.4℃
DMSOの凍る季節となりました~なんてのは冬の季語でして。
酢酸も凍るんですね、全くイメージがなかったですが氷酢酸なんて呼ばれるのでまぁそうかって思います。
ジオキサンは今回の発見です。
‐78℃~0℃が融点の溶媒
クロロホルム:-63.7℃
1,2‐ジクロロエタン:‐35.3℃
ピリジン:‐41.6℃
NMP:‐24℃
DMF:‐61℃
DMA:-20℃
アセトニトリル:‐46℃
DMSOは0℃で凍るのにDMF系統は意外と低温まで液体のご様子。
アセトニトリルはドライアイスと一緒にすることでー40℃のバスに使われますね。
今回は以上です。皆さんの今後の研究生活の助けとなれれば幸いです。
参考文献
基本的な有機溶媒 | 有機合成好きのサイト (yuuki-gousei.com)
おもな有機溶剤の物性_JP (tcichemicals.com)
有機溶媒の沸点一覧表|印刷に最適、別称記載 (nanomisttechnologies.com)
酢酸と氷酢酸の違い | 2019 (classicfoxvalley.com)
見直してみると面白いものですね。
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