若手プロセスケミストのBocです。
今回はある程度検討が進んでくると避けられないイベント、量上げについてです。
前回の続きなので、まずはこちらを見てください。
量上げって大変だよね! その1:https://hemhempop.net/boc11/
今回は化合物の生成についてです。
精製が一番キツイっす!
スケールが上がると分液もカラムもめちゃくちゃ時間がかかるものです。エマルジョンの解消に一晩放置しました!とか半日カラムにかかりました!なんて自慢半分に語る人もいますね。
正直、こんなことやってられないなーとは思いませんか?
そんなあなたに一言です。その分液とカラム、本当に必要ですか?実際の製造ではカラムはまずやりませんよ??
プロセスケミストとして、分液→水出し晶析、カラム→再結晶orスラリー洗浄 に変更してみませんか?
(1.化合物が固体である(アモルファスではない) 2. 化合物は水に溶けにくい 必要はあります)
おすすめの方法
水出し晶析とは、反応後に有機溶媒で希釈せずに、いきなり水を入れる操作です。特に溶媒がDMF、DMSO、THFなど水との親和性が高い溶媒であれば
結晶性の高い化合物であればこれで一発で取り出せます。取り出しも濾過のみなので楽ちんです。
もちろん水以外でも貧溶媒(ヘキサン、アセトニトリルなど)も使用することもできますが、塩の除去を考えると水の方がいいかなーと思います。
コツとしては反応に使用する溶媒の量をできるだけ減らすことでしょうか。
反応溶媒:貧溶媒=1:2~1:4が多い印象です。貧溶媒が多すぎてもうまく析出しません。
反応溶媒が溶解性高すぎる場合には溶媒置換の手段がありますが、そこまでするなら分液してもいいのでは……?という気もします。
スラリー洗浄は一度結晶として取り出したcrudeを貧溶媒に入れて攪拌することで、不純物を除く手法です。
適切な溶媒を探す必要がありますが、うまくいくとかなり綺麗になります。
脳死で分液を振る前に一度試してみませんか?
特にメドケムの皆さん、薬の候補化合物のような骨格は結晶性が高いことが多いですよ?
そんなこと言いながら僕も夜通しカラムとかやっていたんですけどね。言葉も出ません。
おすすめした方法でためらわれる人へ!
原点成分が気になります、金属使ったからなーという時には、反応後にシリカを反応系にぶち込んでみてください。シリカを入れしばらく攪拌し、濾過するだけで原点成分や金属はシリカにトラップされ、綺麗な濾液がゲットできますよ。
嘘だろ……?と思いますよね。ホントです。そもそもカラムができるのであれば、シリカを反応系に入れて化合物が壊れるのでしょうか?だいたいの場合、そんなことありません。原理としてはショートカラムと一緒です。楽な法を選んでください。
繰り返しますが、プロセスでは分液はたまにやりますが、カラムを使いません。ぜひご一考ください。
今回は以上です。皆さんの今後の研究生活の助けとなれれば幸いです。
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