若手プロセスケミストのBocです。
今回はある程度検討が進んでくると避けられないイベント、量上げについてです。
量上げって疲れるよねー。苦手なんだよねー。という人、めちゃくちゃ同感です。
量上げが必要なくらい検討が進むことは嬉しいんですけどね。
量上げが苦手なひと、久しぶりにやる人に向けた一言をまとめます。
量上げはめちゃくちゃ時間がかかる!
初めて・久しぶりの量上げする人、量上げは本当に時間がかかります。
反応の仕込み、昇温、分液、カラム……すべてスケールが上がるに比例して時間がかかります。
焦って実験失敗すると、せっかくここまで苦労して量上げした中間体が無残に粉々になったり、こぼして大幅にロスしたり……悲しい未来が待っています。
無理のない実験計画を立てましょう。また、思いのほか疲れがたまるのでしっかり休みましょう。
量上げ苦手です!
これも非常に同感です。まず大前提として、スケールが上がると予期せぬトラブルが顕在化するもの!です。
スケールアップ時のトラブルは小スケールの時には見過ごされていただけで、本来この実験が有していた潜在的リスクが実現しただけのケースが多いです。
結果には必ず原因があります。腕が悪い!で片づけられる目に原因究明をして次のスケールアップに生かしていきましょう。
一度にスケールを上げすぎない!
全量基質を投入してスケールアップ失敗しましたーなんてことにならないように。
主義によるのですが、スケールアップ5倍~20倍でうまくできることを試すのがセオリーです。スケールは徐々に上げていきましょう。
また、スケールアップでトラブルが発生した際には、原因をはっきりさせておきましょう。
世の中にはなぜか大スケールでうまく反応進行しない反応も存在します。
原因が反応そのものにあるのか、スケールアップ特有のラボエラー(後述します)なのかはたしかめましょう。
スケールアップあるあるなラボエラーとは?
温度管理が適切か
突然ですが、内温 計ってますか?外温と内温の差って結構ありますよ?特にー78℃等の極低温反応には気を付けてください。
スケールが上がるとその分昇温にも冷却にも時間がかかります。
一気に試薬を入れてしまって発熱し、冷却が間に合わず副反応が進行してしまった(swern酸化とかありがち)!反応終了したけどなかなかrefluxから室温に戻らずに基質が壊れた!なんて例を挙げると止まりませんね。
スケールアップの際にはナスフラスコではなく3口以上のフラスコを使って、必ず温度計を差しておきましょう。
溶解熱・中和熱などが結構発熱します。DMFとかDMSOの水の溶解熱なんかも想像以上ですね。
クエンチの時にも氷浴に浸らせておきましょう。
ちなみにプロセス開発では、あえて規格よりより激しい条件(より高温反応、過剰な試薬、長時間)に付すことで、化合物が壊れないか、どんな条件でどんな不純物が増えるかをあらかじめ確認しておきます。
製造で、冷却器が壊れた!熱暴走して温度が下がらない!次の反応釜への移送ができない!など予期せぬトラブルが起きることを想定しているんですね。
攪拌速度が適切か
小スケール検討では結構ガンガン回してませんでした?
大スケールでも同じように攪拌しないと再現取れませんよ?
分子内反応と分子間反応が競合する場合や、有機溶媒中で無機塩を使用した反応なんかは特に顕著に効果があります。
プロセス検討では攪拌速度も重要なパラメータです。ラボスケールではなかなか難しいですが、どのくらい激しくスターラーを回していたかなーくらいは覚えておきましょう。
反応時間が適切か
上記二つと少し被るのですが、スケールアップはすべてに時間がかかります。
あらかじめ小スケールで余分に長時間反応させてみて、どのような副生成物ができるのかを確認しておくことをお勧めします。
できた副生成物の構造さえわかれば、それを回避する道標は見えるはずです。
より最適な反応条件へとブラッシュアップできれば、あなたは立派な研究者です。
分液やカラムでも長時間放置で化合物が壊れることがあるので注意ですよ!
その2へ続きます: https://hemhempop.net/boc11-2/
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