若手プロセスケミストのBocです。
今回はコンタミについてです。誰もが一度は頭を悩ませる問題ですね。
特にカップリング反応における金属種のコンタミは無数に知られていますね。
使用する触媒のロット間差で反応がうまくいかなくて、よくよく検討したら微量の多種の金属が反応に寄与いていた、なんて話は有機化学の歴史においてよくネタ話にされています。
また最近ですと、金属フリーのカップリング反応が論文で報告されるたびに壮絶な議論を催していますね~、実際のところはどうなんでしょうか。
プロセスケミストにとってコンタミは死活問題です。
プロセスケミストは0.1%の不純物を精査し、管理するのが仕事です。例えばUVのある有機化合物ですと1g中に1mg混ざるだけで主要な不純物として認定されます。金属種ですとXRF等を使用してppmオーダーにて管理する必要が出てきます。非常に気を使います。
そこで、今回はコンタミの原因と現場での処置についてお話します。
コンタミの原因と防止策は?
そもそもコンタミには人為的なものがほとんどです。
使用器具
前に使っていた人の器具洗浄不足が一番確率的には高いです。
器具の使用前にはメタノールでしっかり拭きあげます。
三方コック
グリースもコンタミするとやっかいなので、テフロン素材のものと使います。学生の頃は密閉性がより高くなるようにガラスの栓にグリースを塗って使っていましたが、今はコンタミの方が怖いです。
というか多少空気が混ざって反応が進行しなくなるような条件はプロセスでは採用されません。
秤量てんびん
こちらも高い確率でコンタミのリスクがあります。
メタノールでべちょべちょにしてきれいにふきます。濡らすことで化合物が飛散しにくくなる効果もあります。
万が一吸ってしまったら危ないですもんね。
薬の原薬および中間体は難溶性のものが多く、一度拭いただけでは洗浄が不十分なことも……。とても気を使います。
攪拌子
金属が残りがちです。
プロセス検討時には攪拌翼をつかうので攪拌子の出番は少ないですが、一応注意事項の一つに挙げておきます。
ロット間差
これは本当に大事です。
不純物は試薬の製造元はもちろん、ロットごとに含量、プロファイルがすこしづつ異なります。
そのため、試薬の製造元の選定は非常に大事になります。値段がいくら安くても、品質が安定しないメーカーの試薬は使えません。また、原薬まで残ってくるような不純物が含まれている場合は、試薬メーカーの変更をするケースもあります。
実験ノートに必ず使用してメーカーとロットは記録しましょう。
プロセスケミストがコンタミしてしまったら?
実験中にコンタミした際にはその旨を記録として残し、データを棄却する必要があります。
クロスコンタミ(他人の実験の化合物がコンタミすること)が一番コンタミの化合物の同定が困難であり、説明が厄介です。
GMP製造でも同様ですが、分析試験が規格から逸脱しやり直しになると、各責任者のサインが必要になるためかなり煩雑になります。
今回は以上です。皆さんの今後の研究生活の助けとなれれば幸いです。
参考文献
撹拌子が金属触媒反応のコンタミを引き起こす話 | 有機化学論文研究所 (moro-chemistry.org)
NMRで見える不純物のピークは一体何だろう?まとめてみた。 | ネットdeカガク (netdekagaku.com)
原料の不純物で反応が行ったり行かなかったりした話: たゆたえども沈まず-有機化学あれこれ- (seesaa.net)
パラジウムが要らない鈴木カップリング反応!? | Chem-Station (ケムステ) (chem-station.com)
野崎・檜山・岸反応 Nozaki-Hiyama-Kishi (NHK) Reaction | Chem-Station (ケムステ) (chem-station.com)
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